%e3%83%9b%e3%82%99%e3%83%83%e3%83%81%e3%83%a3「んっ?誰か来たよ」

高齢者の運動グループの方々が
窓の外を見て言いました。

「え〜っと、どれどれ」

と私が外を見てみると、
数ヶ月前に入院していた
Aさんでした。

「あら、Aさんですよ」

と皆さんに伝えると

「え〜〜〜!」

という反応。

それは、Aさんが手術をして
体力がかなり低下したようだ
と皆さん聞いていたからです。

そのAさんが、在宅酸素療法の
携帯ボンベを右手で引きながら

一人で会場にやってきたのです。

「家の中だけいると脚が弱るから、
 時々散歩してるんだ。
 ところどころに座って休むけど。」

とニカッと笑いながら言いました。

フーフーと息を吐く姿に、
皆さん「たいへんそう」という
印象は持ったようでしたが、
久ぶりに話せて安心したようです。

そのAさんがやってきた時間、
これからボッチャをやろうとしていた
ところでした。

ボッチャはパラリンピック種目にも
なっているユニバーサルスポーツです。

[参照]
https://youtu.be/j_G3GBfj_0Q

ボールを転がすことができれば
一緒にできることもあって、

「あら、これだったらAさんも
 できるんじゃないの?」

とあるメンバーが声をかけました。

たぶん始めて見るボッチャに
どんなふうに動くのかイメージが
つかない様子だったAさんですが、

デモを見せると、これくらいだったら
やれる(歩いてくるくらいですから)
と思ったようで

「どれ」

とボールを持って転がしました。

簡単そうに見えるのに
思った所へうまく転がらず、
「あれ?うまくいかないもんだね」
と笑顔が見え始めました。

チームメイトから

「ほら、Aさん、あそこのボールの
 間を狙って」

と言われれば、

「頭ではわかってるんだよ、頭では。
 でもさ、わかるだろ?」
「うん、わかるよ(笑)」

と微笑ましい会話が続きます。

全身をダイナミックに動かすこと
だけがスポーツではありません。

スポーツの語源には『気晴らし』
という意味もあります。

家にいる時間が長かったり
一人で散歩することが多かったり
するAさんにとって、

ボッチャは対等に動いて話して
茶化し合える環境を創りました。

それにしても、

ボッチャを持って行って良かった。